ゾウリムシを採集(さいしゅう)して、増(ふ)やし、肉眼(にくがん)やルーペで観察(かんさつ)する方法を紹介します。

※採集(さいしゅう)するときは、安全(あんぜん)のため、必ず大人と一緒に行きましょう

1.道具をそろえる

ゾウリムシを観察・飼育するための環境(かんきょう)を整えましょう。

入れもの

| 180ml程度のガラスのびん。

ゾウリムシの入れものは、観察(かんさつ)しやすいガラスがピッタリ。200mlのトールビーカー(700円くらい)やお酒(さけ)が入っているガラスカップがおすすめです。

つかまえる道具

|スポイド、または100 円均一ショップ等で売られている調味料を入れる柔らかい入れもの

ゾウリムシは少しよごれた溝に住(す)んでいます。ゾウリムシをつかまえるには水と泥(どろ)をいっしょにすい上げる必要があります。

 

ふやすために必要なもの

| 小麦粉、きな粉、保存のためのビン

小麦粉ときな粉は、ゾウリムシのエサであるバクテリアをふやすための「バクテリアのエサ」です。

鍋に小麦粉、きな粉を同量(1対1)で混ぜ合わせ、弱火にかけて水分を飛ばします。冷ましてビンに入れておくと長期保存ができます。

2.ゾウリムシをつかまえる

!水が少ししかないところでも、キケンはいっぱい。かならず大人といっしょに採集(さいしゅう)しましょう。

すみかをさがそう

| ゾウリムシのすみか

水の流れがゆるやかで、溜(た)まっているような場所で、水の上に白っぽい膜(まく)が張(は)っている用水路(ようすいろ)などにすんでいます。
水の浅(あさ)い場所を見つけて、水と泥(どろ)といっしょにすい上げてみましょう。オオカナダモの葉の裏(うら)にいることもあります

・泥(どろ)がたまっていてゆっくり流れているところ
・うすく白っぽい膜(まく)がはったどぶの底(そこ)
・下水(げすい)が流れている溝(みぞ)

少しよごれた溝(みぞ)の底(そこ)には食べ物のかすがあって、そのかすはバクテリアのえさとなります。ゾウリムシは、バクテリアが大好きです。ゾウリムシは、バクテリアを食べて生きています。
バクテリアがすんでいそうなところをさがすと、ゾウリムシをつかまえられるかもしれません。

つかまえよう

| 水と泥(どろ)をすい上げる

ゾウリムシをつかまえるには、水と泥(どろ)をいっしょにスポイドですい上げます。調味料を入れる柔らかい入れ物を使うときには、口を下にして容器(ようき)をかるく押(お)さえてから力をゆっくりぬくと、すいこむことができます。

※ストローでつかまえるにはストローを水の中に入れます。その後、ストローの上部を指で押さえて持ち上げると、すいあげることができます。

つかまえる量(りょう)

| 少量の水と泥(どろ)

入れ物の下から1~2センチくらい、水と泥(どろ)をすい上げましょう。

残念ながら、このときゾウリムシがつかまえられたかどうかは分かりません。水と泥(どろ)をすい上げて4日~5日くらいしてゾウリムシが増(ふ)えたとき、つかまえられたかどうかが分かります。増(ふ)えていなければ、ゾウリムシはつかまえることができていないということになります。場所を変えて、もう一度チャレンジしてみましょう。

3.つかまえられたかどうかを確かめる

採取した水と泥(どろ)の中にゾウリムシかいるかを確かめてみよう。

環境(かんきょう)を整える

|ビンに水道水をそそぐ

泥(どろ)や食べ物など、ゾウリムシや他の生き物がいっしょになった水を、ゾウリムシが増(ふ)える環境(かんきょう)に整えます。その第一歩として、ビンに水をそそぎます。水道水でOKです。

バクテリアをふやす

|まぜ合わせた小麦粉ときな粉を耳かき3はい分程度入れる

まぜ合わせた小麦粉ときな粉はバクテリアのえさです。バクテリアがえさを食べて大量に増(ふ)えると、ゾウリムシも増(ふ)えて、観察しやすくなるのです。

かきまぜる

|スポイドやストローで水をかきまぜる

やさしくそっとかきまぜましょう。

暗(くら)いところにおく

|ゾウリムシは光が苦手

ゾウリムシは明るいところが苦手(にがて)です。家の中の暗(くら)ところにおいてください。ダンボールにいれておくものよいでしょう。また、ビンがたおれないように箱(はこ)に入れるなどして守ってあげましょう。少し大きめのダンボール箱を上からかぶせると暗(くら)くできます。

水をきれいにする

|環境(かんきょう)を整える

次の日、泥を残して、新しい入れものにうつして、下の写真の(ウ)の状態にして、暗(くら)いところにおきます。

透明(とうめい)な水にする

|観察(かんさつ)に向けて


観察するは、ゾウリムシが入っている水を色がつかない透明(とうめい)な状態にしておく必要があります。
その次の日も、また新しい入れものに「上澄み」だけをうつして、(エ)のような状態にして、暗いところにおきます。

 

Q&A

Q:水道水を使っていいの?
水道水をそのまま使います。蛇口からでOK。汲み置き水、煮沸した水などを使わなくても問題なし。

Q:エサやりの回数は?
バクテリアをふやすためのエサ( 小麦粉ときな粉) は、一度入れたら、ゾウリムシが見つかるまでは与えません。入れすぎると白くにごってしまいます。ゾウリムシがいなくなってしまうかもしれません。

Q:暗いところがないときは?

ダンボールをかぶせて、ゾウリムシ用の暗い部屋を作りましょう。ゾウリムシは、明るいところが苦手です。

4.観察(かんさつ)する

観察の前に

|ルーペ、虫めがねの使い方

水と泥を採集して、エサを与えて3~ 5 日が経過( けいか) したころから観察を始めます。ルーペを用意しましょう。

●ルーペの使い方(見るものを動かす)
ルーペは、眼の近くで持ちます。見る対象を動かして使います。

●虫めがねの使い方(レンズを動かす)
虫めがねは、見る対象にレンズを近づけます。見えるところまでレンズを動かします。

観察しよう

|肉眼(にくがん)で観察(かんさつ)

なれてくると、ゾウリムシが一生懸命動き回っている様子を肉眼(にくがん)で観察することができるようになります。白い小さな動いている点がゾウリムシです。

図1:水に色がついておらず、透き通っている状態
エサを与えないで放っておきます。ときどきかきまぜてあげましょう。

図2:ゾウリムシの集まり、凝集塊(ぎょうしゅうかい)
ゾウリムシが活発に活動を続けていて、一番良い状態です。肉眼でも見えますが、ルーペを使うと、元気に動いているゾウリムシを観察することができます。

拡大(かくだい)して観察しよう

|ルーペで観察(かんさつ)

小さな点がゾウリムシ。体の長さは、およそ0.2mm。この入れものの中には、ゾウリムシが何万匹もいます。

双眼実体顕微鏡 30倍

|双眼実体顕微鏡 30倍

ゾウリムシをシャーレに入れ、下に黒い紙をおいて観察(かんさつ)します。双顔実体顕微鏡(そうがんじったいけんびきょう)で観察すると、ゾウリムシは白くて細長い形をしていることが分かります。

顕微鏡 100倍

|×100倍の顕微鏡で観察

体がすけています。人間は、およそ60 兆個(ちょうこ)の細胞(さいぼう)でできていますが、ゾウリムシは、ひとつの細胞(さいぼう)から
できている「単細胞(たんさいぼう)生物」です。

顕微鏡400倍

|×400倍の顕微鏡で観察

口や収縮胞(しゅうしゅくほう)、食胞(しょくほう)が見えます。いらない水分は、おしっこのように外へ出し、バクテリアを食べて栄養(えいよう)をとった残りは、うんちみたいに体の外へ排
出(はいしゅつ)します。

ゾウリムシを飼育(しいく)する

ゾウリムシの飼育にチャレンジしてみましょう。

ポイントは、水の色。水の色を見れば、ゾウリムシの状態が分かります。エサやりも、水かえも、水の色によって判断します。水に色がついていない透明が状態が観察に適しています。

水替えの前に

水替えをする1日前、バクテリアのエサを入れておきます。

バクテリアが増えると、ゾウリムシが入れ物の上部に上がるので、水替えが比較的かんたんにできます。

準備するもの

スポイドと新しい入れ物を用意します。

バクテリアのエサを入れて1日経ちました

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くるくるかきまぜて、10分待ちます。

3つの層

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A、B、Cの3つの層をスポイドですい上げ、新しい入れ物に移します。

すい上げる量のめやす
A:1cm
B:1cm
C:0.5cm

※慣れてくると、スポイドを使わずに、流しに捨てながら3 つの層を少しずつ新しいビンに移せるようになります。

新しいすみかをつくる

新しいすみかを整える。

3つの層を移したビンに水道水を入れ、小麦粉ときな粉を混ぜ合わせたもの(バクテリアのエサ)を耳かき3杯くらいいれ、暗いところに置く。

水替えのタイミング

水替えのタイミングは、水の色、においの変化によって決まります。
薄茶色になったりゾウリムシが見えなくなったときは、ゾウリムシがいなくなっている場合があります。そうなったときでも、バクテリアのエサである小麦粉ときな粉を耳かき3さじ分を入れて、数時間か1 日置いておくと、ゾウリムシ出てくる場合もあります。

水の色がうす茶色、または茶色がかった黄色の状態

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水そのものは透明な状態ですが、色がついています。汚れがビンの内側についており、下部にはエサのカスのようなものが見えます。ゾウリムシにとって、好ましくない環境になってきました。

ルーペで観察しても、ゾウリムシが見つからない

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水の透明度が下がり、水の匂いもきつくなってきました。ゾウリムシにとって活動しにくい環境です。ルーペで観察してもゾウリムシが見つかりにくくなります。下部のもやもやの中にかくれていれば良いのですが、場合によってはいなくなっていることもあります。

この後の飼育

水の色やにごり具合によって、ゾウリムシのエサであるバクテリアを増やしたり、水を交換(こうかん)したりして、ゾウリムシの飼育に適(てき)した環境(かんきょう)に整えてあげてください。
あまり世話をしすぎないように!でも忘れないで気長につきあってください。